ホリラン3応援 〜〜パワーアップイベント 飛騨はじめ〜〜

「くそッ!目の前が霞んできやがった……ッ!」

極寒の地、ロシアの片隅で飛騨はじめは忌々しそうに呟いた。
天候はブリザード。
石松町を抜ける風、石松颪のように強い風が吹き、
辺り一面はそよかぜ自然公園の遊歩道春の名物、雪柳が満開となったかのように白一色である。
足元に降り積もる雪は一夢庵の見目涼しく口に入れればひやりと溶ける葛切り『清流』の如く絡みついてくる。
吹き付ける風と体に積もる雪が急速に飛騨の体温を奪っていく。

「こんな寒さ……!ヤマヤのヒートテックさえありゃあどうってことないってのにッ!」

保温性・透湿性抜群、軽さに優れる登山用インナーウェア、ピクニックの『ヤマヤ』にて絶賛販売中であるが、
生憎とここはロシアである。今の飛騨には手に入れる術もない。
ついに飛騨はその膝を己の足以外に踏みつけられた跡もない、処女雪の大地についた。
俺はもう駄目なのか……諦めかけたその時、上着のポケットからころりと転がりだしたものがあった。

――銘菓『ばくだんもなか』!

目の前に転がり出たそれを見た飛騨は、

「ああ……そうだ。そうだったな」

己の未熟を恥じた。
そして己が両足を叱咤し、再び立ち上がる。

「まだだッ!俺はまだこの『ばくだんもなか』を宣伝し切っていねぇッ!」

身を切るような寒さがなんだというのだ。
そよかぜ通りのシャッター街に吹く風の、心を切られるような寒さに比べればどうということもない。
若輩者である自分を送り出してくれた商店街の店長達の顔を、店を、宣伝を思い出せ!

「ウオオォォーーッ!午後五時から六時はバーゲンタイム!スーパー『クローバー』を宜しくシャーセー!」

気焔と共に立ち上がった飛騨の目の前に、

「揚げたてコロッケを20円から提供!揚げ物の『カツマサ』!宜しくシャー……アイエッ!?」

どっしりとした木造りの門が聳え立っていた。


***


「こちらがヤマヤさんから防寒着。こちらは蘇民堂さんから血流を良くする漢方。それで……」

突如現れたお屋敷の客間で囲炉裏にあたり、『ばくだんもなか』を茶請けに緑茶を啜る。
あまりの急展開に、初めこそ先日一発逆転の望みをかけて仕入れたという家電の『村井』の新商品、
3Dテレビを見たときのように驚いた飛騨であったが、今は既にその驚きもおさまった。
代わりに、飛騨の心は感謝の念で満たされていた。

「……これで全部ね」
「みんな……ありがてぇッ!」

飛騨の元に出現したこのお屋敷は、シベリア送りとなった飛騨を勇気付けるために、
そよかぜ通りの面々が用意してくれた救援物資を届けるためにやってきたのだという。
その思いだけでも……飛騨に前進するための力を再び与えてくれた。

「それじゃあ、気をつけてね」
「ああ!ありがとうよお姉さん!この礼は日本に帰ったら、石松町でうんとサービスさせてもらうぜラッシャーセー!」

100年以上の歴史を持つ、宿場だった頃の時代を今に伝える民宿『はたご』を髣髴とさせる純和風の部屋で、
すっかり回復した飛騨はお屋敷の主、夢見ヶ崎さがみへ礼を述べ、いよいよ戦場へとまた旅立たんとする。

「ああ、そうだわ。この『ばくだんもなか』、とても美味しかったし、いくつか分けてもらっていいかしら?」

その背中へと、掛かった声。
飛騨が断るはずもない。

「ありがとシャーセー!和菓子屋『ひだ』!今後ともご贔屓に!」

振り返り、全力の営業スマイルで答える飛騨のその笑顔は、今日一番に輝いていた。



◆飛騨はじめ
■パワーアップ内容
1-a.ステ上昇(指定したステを+2)
精神+2