“PROFESSOR”さがみ 第4T開幕SS

カレーと紅茶※と神秘の国、インディア。
※インドは世界一の紅茶産出国。ダージリン、アッサム、ニルギリ等の有名紅茶産地がある。

平時でも賑わう公園に、今日は特に多くの人が詰め掛けている。
群集の目的は広場中央に設置中の特設リング。
そう、世界格闘大会の参加者、ポポ・マスカラス・レオの興行がここで行われるのだ。

人混みに目を凝らせば、興行に参加する格闘家達の姿が確認できる。

中国の山林で虎と戦い、タイランドではメカ日本拳法と戦い――
怪我した体に鞭打って、色物バトルはもう勘弁、探す相手は今いずこ。
八極拳士、月読葛八。

獲るモノとりあえず興行観戦――
この手にかかる相手はいないか、今日も鋏が猛威を振るう。
急所攻撃の名手、稲田連子。

遺された男と男の絆はこの手で繋ぐ――
胸に男の遺志を秘め、裏に機関の眼を隠し、興行荒しに拳を見舞う。
K1ファイター、佐々木十吾。

世界中の子供達へ、何処かで観ている約束相手へ――
届け、この声。響け、この咆哮。興行主催者にして自由への闘争者。
かわいそうならいおん、ポポ・マスカラス・レオ。


そして――


***


「あれ?リオンちゃんじゃないですか!」
「あっ!」

興行のメインイベンターとして招待された夢見ヶ崎さがみと共に会場へ足を運んでいた世界格闘大会運営の日雇い少女は、
先日、ちょっとしたティータイムを通じて仲良くなったリオン・セプスの姿を見つけていた。

「こんにちは」
「…………(ぺこり)」

挨拶を交わす少女達と保護者達。
大会関係者同士、いつ再会しても不思議はなかったが、まさかこうも早く再会しようとは。
果たしてその場にいる者達の胸にそのような思いが過ぎったかどうか。
ともあれ、四人はリング近くに設置されたテーブルへと腰を落ち着け、興行の開始までゆったりと過ごすことになった。

照る太陽が広場に熱気を注ぎ、人混みの喧騒が潮騒のように渦を巻く。

お菓子や飲み物について盛り上がる少女達を、プリンとさがみは静かに見守る。
時折、周囲の雑多な音に混じり、二人の声がかすかに響く。

「……先日の話ですが」
「ええ」
「人違いではないでしょうか」
「そうかもしれないわね」
「………………」
「古代ローマカラテ会、ね……」

その実態は闇の中――
誰をその手の錆とする。少女を守る純白の手は、いつか振るわれる時を待つ。
古代ローマカラテ使い、千地プリン。そしてリオン・セプス。

興行の開始まで、あとわずか。


***


「ああー!!葦菜ちゃん!!」

リオンと雑談をしていた少女は、雑踏の中に見知った顔を認め、大きな声をあげた。
その声にびくりと反応し、驚きの表情で少女の方へと振り向いた人物は、

「あ……あぁ……なんだ……。……ああ、もう!驚いたじゃない!」

驚きの表情をぷんすかと変え、少女の方へとやってきた。
その隣には小さな人影が一緒である。

「葦菜ちゃんはきららさんの付き添いですか?」
「そうよ。わざわざあたしが来てやったんだから、いい試合見せなさいよ!」
「葦菜ちゃんのおともだちー?」
「ええと、私はですね……」

姦しい同年代の少女二人と、そこへ混ざる幼き少女。
その幼き少女こそ、世界格闘大会の参加者。

暴飲暴食の幼き女王――
相手を喰らい、勝利を喰らい、爆弾もなかを喰らい尽くす。
埴井流格闘術の無手使い、埴井きらら。

どうやら役者は揃ったようだ。興行開始のゴングが響く。


“PROFESSOR”さがみ、第4T行動……インディアに留まり、ポポ・マスカラス・レオの興行に参加する。