『あんたなんかプリンがぎったぎたのめっためたにしてやるんだからかくごしてよね』
さがみは手に持つ紙面に踊るつたない文字の上へ、微笑ましげな表情を落としていた。
さがみを師匠と慕う、大会運営サイドの日雇い少女から手渡された手紙――通称行動提出。
幼さの香るその手紙にはもう一通の紙片が添えられている。
『あなたとの対戦を希望致します。場所はインディア……』
やや表情を引き締め、己とのマッチングの詳細を記した文面をさがみは読み進めた。
世界格闘大会参加者、千地プリンとリオン・セプス……使う格闘技は古代ローマカラテ。
古代ローマカラテといえば名前だけは耳にするがその実態は杳として知れない格闘技。
「もう一通あるんです」
さがみが手紙を読み終えたところを見計らい、少女が新たな手紙を差し出す。
『アタシとアメリカで派手にやりあおうぜ』
少女から手紙を受け取り、目を通せば簡潔にして豪快に記された行動提出。
ダンゲロス子……炎堂流トンファー武術の使い手。
鍛冶師から派生した炎堂流武術。武器造りを極めんがために武器の扱いに精通した戦闘技術。
「アメリカとインディア……どちらも指定場所付近に“門”があるわね。移動には困らないし、どちらから伺わせてもらおうかしら」
一通り手紙を読み終えたさがみは、指定場所へのアクセス方法について検討しつつ、
にこりと微笑み、手紙をまとめて少女に返した。
「あ……すみません、大会側でデータ管理する関係で、出来れば移動は月に1度に……」
そんなさがみに、手紙を受け取りつつ申し訳なさそうに少女は大会ルールを伝える。
それを聞き、あら、そうなの――と呟き、
「……それじゃあ、ダンゲロス子さんには悪いけれど、今回はインディアに向かいましょう」
頭の中で素早く優先順位を決めたさがみは、この後の目的地を少女に伝える。
「分かりました!早速、手配してきます!」
さがみの答えを受け、少女は大会側が用意する飛行機の手配をするため、一礼をすると直にその場を駆け去った。
***
走り去る少女の背中を見送りつつ、さがみはゆっくりと体に気合を満たす。
――まだ見ぬ武術、存分に堪能させてもらいましょう。
“PROFESSOR”さがみ、第3T行動……インディアに移動し、千地プリン+リオン・セプスと戦う。
***
〜〜おまけ〜〜
インディア行きの飛行機の中。
「嬉しそうね」
「だっていよいよこの目で直に見られるんですよ!ぶつかり合う肉体と肉体!炸裂する技と技!!そして魔人能力!!」
「興奮しすぎて『とんでもない能力をこの身で全て受け止めたい』とか試合に乱入したら駄目よ」
「し、しませんよ!私も一応、最低限の主催者サイドの心得はありますから!」
「ふふふ……それなら安心ね」
「うう……と、ところで師匠、どうして行き先をインディアに?」
「……あなた、紅茶が好きでしょう。折角だから紅茶の本場に行くのも楽しいんじゃないかしら、なんてね」
「……師匠っ!」
『〜〜本日は天候も安定し、当機は順調に航行しております〜〜』