社のゆとりGKダンゲロス参戦プロローグSS

さて、前方にそびえるのは魔人用の頑丈な建築設計の建物。希望崎学園の校舎。
ところどころ校舎に破壊痕が見受けられるのはさすが戦闘破壊学園といったところですか。
近頃は平和になっていると聞きましたが、それでもこの有様とは大したものです。

――などと外から見て考えていても仕方ないですね。それでは行きましょう。

私、社(やしろ)は本日、ここ希望崎学園に「ゆとり粒子」を集めにやって参りました。
なんでも魔人能力の発動を封じる力のあるもので、最近この学園に充満しているのだとか。
魔人能力が大好きな私のご主人様、夢追中(ゆめさこ かなめ)お嬢様の安全を考えると、
私も能力封印系の力は備えておいたほうが良いですからね。
お嬢様はいつでも魔人能力と見ると全力で突っ込んでいきますから……。


―――


さてさて、校舎の近くまで来ましたが……周囲に漂う剣呑な雰囲気。
事前情報の通り、どうやらここでハルマゲドンが勃発するのは間違いないようですね。
一般生徒は避難済み。残るは魔人ばかり。それならば人ならざる私も動きやすい。
存分に学校見学させていただくといたしましょう。

――おや、なにやら近くで騒がしい声が。

声のするほうへ行ってみれば、お嬢さんが二人、賑やかにおしゃべりしていますね。
見たところここの学生ではなさそうですし、緊張感もない様子。学校見学でしょうか。
よりによってこんな場所へこんな日にやってくるとはまた災難な。
危なっかしいですし、ここはひとつ言葉の話せぬ身であれど、なんとか危険を知らせて……
ああ、一人はさっさと奥へ行ってしまいました。
この体では機敏な動きはできませんから追いかけるわけにもいきません。
仕方ないのでひとまず残ったもう一人だけでも……
と思ったら残ったお嬢さんも学園の生徒に捕まっちゃいましたね。
まあ学生のほうに敵意はなさそうなので大丈夫でしょうか。
おや?なぜかあのお嬢さん、学園生についていってしまいました。
敵意のなさそうな学生でしたがそれでも大丈夫でしょうか。
お嬢様と同じくらいの年頃ですし、少々心配というものです。
後を追って見ましょうか。
いざとなったら先程のもう一人のお嬢さんも含め、
私の能力でここから脱出させることも考えましょう。
では行きますか。

「大きな建物だね」

これって学校かな、などと、聞きなれた声が私のすぐそばから発せられます。
そうですね――ではなくて!なぜご主人様がここにいるんですか!
いつの間にか私のすぐそばに立って声をかけてきた夢追中お嬢様。

「オウワシに頼んでこっそりついてきちゃった」

上空で旋回する大きな鳥の影。
あの鳥!何を危ない場所にご主人様を連れてきているんですか!私の一部も身につけさせず!
あのですねご主人様。ここは大変危険な場所なんです。
理由は後日説明しますので、本日はお帰りください。

「んん?うーん、何だか楽しそうな場所の予感がするけど……わかった」

なんとか説得成功ですね。危ない危ない。
ここで魔人同士の大規模な抗争があるなんてばれたら間違いなくお嬢様は飛び込みますから。
では私の能力でお屋敷まで送りますね。

「うん。あ、でも!危なくなさそうなときはまたこっちに転送しなおして!」

え……

「ここ、凄く楽しい事が詰まってそうな雰囲気だから!」

……分かりました。ご主人様に頼まれたら断れませんね。
危なくなさそうなときを見繕って、ときどき屋敷からこちらに転送いたしましょう。
でも危なくなりそうな雰囲気があればすぐさま帰っていただきますからね。

「うん!ありがとう!」


―――


さあ、お嬢様にもお帰りいただきました。予定外の約束をしてしまいましたが。
こんな物騒な場所へ連れ込むのは気が気じゃないですが、まあ戦闘前ならばいいでしょうか。
しかしここが希望崎学園だとばれないよう注意しないといけないですね。
魔人の巣窟として名高い場所だと知ったら間違いなく居座ってしまうでしょうし。
まあお嬢様の対策は追々考えるとして、まずは先程のお嬢さんを追いますか。

……さて、どちらへいったことやら。


日本家屋の付喪神、社――ゆとりGKダンゲロス参戦!!!