「あの……天狂院さん」
「あら、あなたは……オウワシさんのご友人の……」
「はい、夢追です」
「何か御用でしょうか?」
「じ、実はですね、ずっと聞きたいことがあったんですが……」
「はい、何でしょう?」
「あの、その……第八次ハルマゲドンの時……オウワシと……その……」
「?」
「えぇっと、あの、天狂院さんはオウワシのこと、どう思ってますか!?」
「えっ?オウワシさんですか?」
「はい!」
「そうですね、責任感もあるし、優しいし、とてもいい方だと思っています」
「そ、それじゃあ……やっぱりあの時に……」
「ハルマゲドンの時はとてもよくしていただいて」
「あ、あ、あの……」
「はい?」
「て、て、てんきゃっ!ーーーーっっっ!!!」
「まあ!大丈夫ですか!?」
「おもいっひひしはをかんひゃいましはー!いはいー!」
「すぐに手当てしないと……夢追さん、こちらを向いて口を開けてください」
「はい?えーっほ、こうへすか?」
「直に済みますからね」
「へっ!?ひょっほ!?なんへ顔をこへいしへ……っへいうか顔がひかいへすーっ!」
「安心して、私に任せてください……私の能力で治しますので」
「わぁ!ほうひょくへすか!……っへ、え?そへっへもしかしへ……」
「私の唾液には治癒効果がありますから、夢追さんの舌を舐めれば直に治りますよ」
「え、あ、え、その、うぅーー……」
――――――
――――
――
がばり、と夢追は母屋の布団から飛び起きた。
火照る頬に手を添えつつ、ゆっくりと周囲を見回す。
枕元の有明行灯の灯りが見慣れた土壁や木戸をぼんやりと明るく照らしている。
そっと己の唇を指でなぞり、ふぅと溜息を吐いた夢追は、ぼふりと枕に頭を乗せる。
「ひょっほやしほー、いまほはべふひひんひゅうひはいひゃはいへひょー」
(※ちょっと社ー、今のは別に緊急事態じゃないでしょー)
――何を仰いますか!紛れもない緊急事態でしたよ!!
※社の能力「夢の寄辺」……夢追の身に危機が迫った際、夢追を母屋の布団の中へと転送する能力