オウワシの苦悩〜こぼれ話〜

「……あ!もしもーし!聞こえる?つながってる?……うん、大丈夫。ひさしぶりー」
「……うん、うん……こっちは元気にやってるよ。そっちは?体調……」
「……うん、そっか。確かに今回の発作はちょっと長いね……。……うん、そうだね。」
「……ああ、そうね。魔法とか奇跡とか?うーん、色々見れたことは見れたけど……」
「……うーん、なんというか……いや、口では言い辛いって言うか口に出したくないって言うか……」
「……あぁ違う違う。そんなことはないよ。みんな私が喋っていてもちっとも驚かないし」
「そうそう、今お世話になってる生徒会にはピンク色の熊さんとか生きている壷さんとか居るし」
「……生徒会?……うん、生徒会長さんはまとも……あ、いや真面目な人で、ひとりで複数の足音をたてることのできる……え?肢曲?うーん、ちょっと違うかな……」
「アニメーターやってる人も居て、私の声で何かアニメを作ろうなんて言ってくれたよ!……そうかな?うーん、今までほとんどの人がぎょっとするからちょっと不安に思ってたけど……」
「ピンクの熊さんも似たようなコンプレックス持ってるかも。さっき話したアニメーターの子とアニメの話をしてて、この作品は中の人の演技が秀逸で〜とか聞いてたら熊さんがいきなり“中の人なんて居ない!”とか襲い掛かってきてちょっとびっくりしちゃった」
「私もいきなりくちばしこじあけられて“中に人はいってない”“腹話術じゃないの?”“発信機よ発信機”とか散々いじられたこともあったし、熊さんも昔そんなことがあったんじゃないかな」
「……つぼ?ああ、壷。えーっと、うん、壷。手足が生えててちょこちょこ動いてる……えぇ!?そんなんじゃないよ!逞しくないから!毛なんか生えてないから!」
「後は公文が大好きな人とか……そうだね。いかにも生徒会っぽいかも。他にも男子ならいかにも優等生ですってさわやかな人がいるし、女子ならちょっとおっとりしたいかにもお嬢様ですって人が……うーん、その人の方がよっぽどお嬢様っぽいかな……ゴメンゴメン!そういう意味じゃないよ!」
「……うん。あ、でもサングラスに金髪の人なんかもいるよ。性格は陽気でいい人みたいだけど。……ううん、そんな感じじゃないよ。どっちかっていうと中学生に見えるくらい」
「……ああ!そう!忍者がいるよ!忍者っていうか“くの一”かな。……え!?忍術!?……うーん、そこら辺は帰ったら教えるよ」
「うん、出来るだけ早く帰るから。また手料理食べさせてよ。とびっきりのやつ捕まえてくるから……そうそう、あの雉料理食べたら生のまま食べていたのが馬鹿らしくなるくらいだったし……」
『おーい!オウワシ!あん?なんだ、Skypeやってんのか?』
「あ、ごめん!生徒会の人が何か言ってる。ちょっと待ってて……なんですか?阿晴さん。今ちょっと……」
『オウワシ!この前の天狂院との絡みはどうなったんだよ!まさかシカトってことはないよな!?女の子のほうから大切なもんを差し出してきたんだからあれを無視すりゃ男がすたるってもんだろ!?』
「ちょっと!なんてこと大声で言ってるんですか!それに私は男じゃ……いやそれ以前に鷹と人……いやその前にそもそも……」
『なんだ!?女同士ってこと気にしてるのか!?構うこたぁねーだろ!鳥ってあれだろ?雄でも一物がないんだろ?そんで穴同士をこするのが正しい作法なんだろ?人間相手なら女同士でなんも問題ねーじゃん!』
「へ、変なこと言わないでくださいっ!また例の動物図鑑見て偏った知識ばかり……図鑑はそういう……いや、そうじゃなくてそもそも……」
『お!九(いちじく)!ちょっと一発やらせてくれー!』
「あ!ちょっと!鷹の話は最後まで……もうっ!」
「……ごめーん、生徒会にも今みたいな人もいてさ……あれ?もしもーし?」
「……あれ?つながってるよね?」
「……え?」
「ちょっと待って!何で急に敬語なの!?怖いよ!」
「……違うよ!誤解だから!いや、“ゆうべはおたのしみでしたね”じゃないから!待って待って!」
「……そうそう!違うから!さっきの人はちょっと言動と行動と頭に問題があるだけで……」
『あら、オウワシさん』
「あ!ちょうど良かった!今その天狂院さんが来たからちょっと……天狂院さん!この前の話なんだけど……」
『この前の……と言いますと?』
「あの触手……あ、えっと、食事を持ってきてくれたときの……」
『ああ!やっぱり食べてみることにしました?どうぞどうぞ。遠慮なさらず私を 食 べ て』
「やめて!そんな言い方絶対に誤解……あ、もしもし!違うから!今のは言葉の綾……って言うか言葉そのままって言うか……」
「もしもし!もしもーし!」


第八次ダンゲロス・ハルマゲドン開幕まで――あと5時間!