〜4ターン目先手終了後の分岐世界(パラレル・ワールド・エンド)〜 新参Bチーム戦勝記念SS

緑風「――んん……ん?」
梨咲「ああ!緑風さん!!」
緑風「あれ?梨咲?えーっと俺は……ここはあの世か?え?お前成仏したの?」
梨咲「何言ってるんですか。ここは保険室ですよ」
緑風「え?だって俺、古参のヤツに殺されちまったんだよな?」
梨咲「それがですね、あの後D・Pさんがやってきて緑風さんのこと治してくれたんですよ!」
緑風「え?」
梨咲「だから……緑風さんは今、ちゃんと生きてますよ!」
緑風「え?あれ?D・Pってアイツ女しか治せないんじゃなかったか?」
梨咲「なんでも時間と設備があれば男でも治せるとか言ってましたよ。戦闘中なんかじゃ女しか治せないけどな、って」
緑風「なんだそりゃ……あ!?ってことは覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)は決着ついたのか!?」
梨咲「はい!緑風さんのおかげで、新参Bチームは皆無事です!覇竜魔牙曇は古参陣営の降参で決着しました!」
緑風「おお!ってことは俺たち新参陣営の勝利か!」
梨咲「はい!完勝です!」
緑風「いよっしゃあ!」
梨咲「本当に……緑風さんも助かってよかったです……私……すごく……」
ダビ「佐座!目を覚ましたか!」
緑風「ダビデ!お前も無事だったんだな!」
ダビ「ああ。と言っても俺も一度は死んだようなものだったけど……な」
緑風「あん?どういうことだ?」
ダビ「俺も古参のヤツに殺された、という記憶はあるが、気付いたときには殺される直前に古参陣営が降参していた」
緑風「は?何を言ってるかわからねーぞ」
夢追「事象の改竄……ですよ」
緑風「……誰?」
ダビ「俺の台詞を取るな。夢追」
緑風「夢追!?ああ、夢追か!……着物なんて着てるし眼鏡かけてねーし、髪型も違うからわからなかったぜ」
夢追「覇竜魔牙曇で服がボロボロになっちゃいましてね。大至急着替えたんです」
ダビ「ボロボロになったというか」
夢追「ストップ!服持ってきてくれた親友にも泣かれちゃいましたし、反省してるんですよ!」
ダビ「反省……ね」
夢追「と、とりあえず今度からもうちょっと破れにくいようスパッツじゃなくてハーフパンツにでもしようかと」
ダビ「ほう」
緑風「あ!アレは!?」
夢追「えっ!?なんですか!?」
緑風「……」
ダビ「……」
夢追「……」
緑風「よくわからねーがどうせ夢追がいつも通りのことやって、そしてさっぱり反省してないってことはわかった」
ダビ「ああ、そうだな」
夢追「は、反省はしているのですが条件反射で……というか話を本筋に戻しましょうよ!」
緑風「ああ、事象の改竄だっけ?」
夢追「はい。どうやら古参陣営には既に起こった出来事を時間を遡ってなかったことにする能力を持った魔人がいたようでして」
緑風「はあ!?無茶苦茶じゃねーか!」
夢追「まあ自由に使えるようなら無茶苦茶もいいところですが、どうやら改竄できるのは途中経過くらいで結果は変えられない能力のようです」
緑風「あー、つまり、古参陣営がこっぴどく負けた。事象改竄能力を使って時を戻し、こっぴどく負ける前にさっさと降参した。そういうことか」
ダビ「どうやらそのようだ。まあ、おかげで俺は無事に生き延びれたわけだが」
緑風「結局死んだのは俺だけかよ。格好つかねーな」
夢追「まさにD・Pさんの言った通りってわけですね」
緑風「ああ?D・Pのやつが何か言ってたのか?」
夢追「はい、彼の完全蘇生ですが……対価があることをお忘れですか?」
緑風「対価?……あぁ、そいつが死んでも成し遂げたかったこととかなんとかだっけか?」
夢追「そうです。命を賭したその理由、それを対価として蘇生させる能力です」
緑風「見たとこ俺には何の変化もねーけど……俺は何を支払ったんだ?」
夢追「“ヒーローの死という見せ場”です」
緑風「……は?」
夢追「D・Pくんは緑風くんの格好良く死ねる見せ場を対価に生き返らせてくれたんですよ」
緑風「……」
ダビ「クク……」
夢追「ふふ……」
緑風「……ぷっ!あっはっは!あー……なんだそりゃ。あいつそういうこと言うやつだったのか」
のも「傑作だね!あるいはツンデレ!」
緑風「おお、阿野次」
ブロ「緑風お前の今回の活躍は見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない」
緑風「武論斗さん!」
ブロ「お前の活躍に免じてジュースをおごってやろう」
緑風「俺、そんなに活躍したのか?一人で突っ走ってさっさと死んじまっただけのような」
ブロ「活躍しようとして活躍するんじゃない活躍してしまうのがナイト」
ダビ「お前が囮になってくれた。それが今回の新参陣営の勝利につながった。それは事実だ」
のも「格好良かったよ!さっすが主人公!」
緑風「へへっ……そうか……って、なあ?あっちの隅っこで稲荷山は何やってるんだ?」
和理「……私の……究極の……握り寿司……」
ダビ「ああ、転校生の魂で究極の握り寿司が完成するはずだったんだが」
のも「私が転校生をひきつけてね」
ダビ「だがいざ寿司を握ろうという直前で古参が白旗をあげて」
のも「転校生もどっかいっちゃって」
和理「……完成すると……思ったのに……」
緑風「ああーなるほど……おい!稲荷山!」
和理「あ、緑風君。もう大丈夫?」
緑風「おう!お前もまあ寿司は残念だったが新参は完勝したんだろ!チームリーダーなんだからもっとシャキっとしろよ」
のも「そうそう!和理のこの通信機を使った戦術ラジオ作戦はすっごい役に立ったんだし、胸はっちゃいなよ!」
和理「そうね。できなかったことを悔やんでも仕方ないし、折角古参に勝ったんだからもっと喜ばないとね」
夢追「ということは当然、この後……?」
和理「ええ!転校生握りは出来なかったけど、とびっきりのお寿司をみんなに振舞ってあげるわ」
のも「やったあー!」
緑風「おおーっし!なんか安心したら腹も減ってきたし、思いっきり食うぜ!」
ダビ「待てよ佐座。ひとつ忘れているぜ」
緑風「あん?何をだ?」
夢追「ああ、そうですね」
ダビ「ほれ、お前を心配してくれていたヒロインに何か言ってやれよ」
梨咲「……」
緑風「あー……梨咲……」
梨咲「緑風さん……」
緑風「なんか心配掛けさせてごめんな。一人だけ死んじまって、結局生き返って、ほんとD・Pの言うとおりかっこ悪く生き残っちまって」
のも「カーット!」
梨咲「えっ!?」
緑風「な、なんだよいきなり」
ダビ「おいおい佐座!お前の中二力はその程度だったのか?」
緑風「は?どういうことだよ?」
ブロ「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」
のも「聞こえてない」
夢追「何か言ったの?」
ダビ「俺のログには何もないな」
緑風「みんなしてなんだよ!?」
夢追「ほら!今は緑風くんの見せ場なんですよ!」
のも「心配するヒロインに掛ける主人公の台詞ってものがあるじゃん!」
緑風「……あー、なんかお前らの言いたいことが分かった……」
ダビ「ほれ、事象の改竄だ。もう一回」
のも「テイクツー!アクショーン!」
梨咲「え、ええっと?みなさん?」
緑風「あー……梨咲」
梨咲「あ、はい」
緑風「心配してくれてありがとうな。だが、俺のことなら心配無用ってやつだ」
梨咲「で、でも本当にあの時はもう駄目かと思って……すごく悲しくて……」
緑風「大丈夫だ。ほら、現にこうしてぴんぴんしているだろ」
梨咲「そうですけど……」
緑風「心配するなって。俺には主人公補正って奥の手だってあるんだ」
梨咲「ど、どういうことですか?」
緑風「つまり、だ」

緑風「主人公は何があっても死なないんだよ。だから俺のことはいつでも安心して見ていろ」

梨咲「…………はい!」

のも「ひゅー!」
夢追「熱いですね!」
ダビ「世話の焼けるやつだな」
緑風「っておい!そっちに話を持っていくなよ!折角格好良く決めたところじゃねーか!」
梨咲「そ、そんな、私、その、あの……」
緑風「梨咲もここで乗っかっちゃうの!?」
和理「みんな!お寿司ができたよ!」
ダビ「おっとそれじゃあ続きは寿司を食べながらだな」
夢追「それじゃお先に……って武論斗さんもう食べてる!?」
ブロ「もぐもぐ」
のも「はやい!」
夢追「メイン盾きた!……じゃなくて速さなら私も負けませんよー!」
のも「私も私もー」
緑風「……」
梨咲「……緑風さん?食べに行かないんですか?稲荷山さんのお寿司すっごく美味しいですよ?」
緑風「ああ……もちろん食べるぜ……ただ……な」
梨咲「どうかしたんですか?」
緑風「覇竜魔牙曇の前ではヒーローとして格好良く死のうなんて考えてて、結局生き延びて、まあ主人公だから当たり前だけど」
梨咲「はい」
緑風「実際、格好良く死ねなくて、無様に生き延びて、それでわかったけどさ……」
梨咲「……はい」
緑風「ありがとな」
梨咲「えっ?」
緑風「お前の『死ぬ』はやめようよ!って言葉と……あとは一級ツンデレ師のD・Pのおかげでわかったんだよ」
梨咲「……」
緑風「無様に生き延びるってのも偶にはいいもんだな!」
梨咲「!!……はいっ!」
緑風「さ、俺たちも行こうぜ」
梨咲「あ、そうですね!早くしないとお寿司がなくなっちゃいます!」


和理「それでは新参陣営完全勝利を祝しましてー」
一同「かんぱーい!」


さんきゅーおーるきゃらくたー
さんきゅーおーるぷれいやー
そして……さんきゅー魁!!ダンゲロス!

――魁!!ダンゲロス――ハッピーエンド!!


***


「納得いかないわ……」

地の底から響き渡るような、底冷えのする声音に、勝利の祝杯を飲まんとしていた新参陣営の面々は凍りついた。
この声、このシチュエーション、このパターンは、
皆が皆、どす黒い予感を胸に、油の切れたロボットのようにぎこちない動きでギギギ……と声のした方へ首を向けると――

――あれ?このお話ってハッピーエンドじゃなかったの?
――結局、格好良く終わらせてはくれないの?
この物語の主人公である――否、先程まで主人公であった緑風は、疑問と諦観をないまぜにした気持ちで不穏な空気の発生源へと振り返ると――

はたして、嫉妬の炎を身にまとう、緑眼の怪物がそこにいた。



〜4ターン目先手終了後の分岐世界(パラレル・ワールド・エンド)〜 新参Bチーム戦勝記念SS もうちょっとだけ続くんじゃ

埴井「なんで!?どうして!?なに緑風ばっか目立ってるの!?」
和理「は、埴井さん、あなたもすっごく活躍してたわよ?あなたが睨みを利かせてくれていたお陰で」
埴井「なによ!それじゃ私がヒロインポジにならないのはなんで!?あたしなんて、その……ゴニョゴニョ……してまで戦ったのに!」
ダビ「落ち着け埴井。俺もまだケツが痛いんだ。アレは野良犬にでも噛まれたと思って忘れろ」
夢追「わ、私も親友に泣かれちゃいましたし、皆さん頑張ったってことで」
埴井「うるさいうるさいうるさーい!みんなそうやってあたしの恥ずかしいところ思い出して笑ってるんでしょ!」
緑風「すまねぇけど誰か俺にも話の流れを教えてくんない?」
埴井「もういいわ!あんた達!こいつらみんなやっちゃいなさい!」
ブロ「おい馬鹿やめろ」
和理(どうするの?この事態?)
ダビ(いつものパターンから考えるとやばいな)
緑風(え?ハッピーエンドじゃなくて全滅エンドフラグ?俺が死んでる間に何があったの?)
夢追(話すと長いんです)
のも(よし!ここは私にまかせて!いいこと思いついた!)
夢追(阿野次ちゃん!頼もしい!)
和理(何する気?)
のも(まあまあ見ていてちょうだい)
埴井「なによ!?」
のも「落ち着いてアッシーナ!皆アッシーナが一番目立ってたって思ってるんだよ!」
埴井「適当なこと言わないでよ!私が黙っててもみんな無視して話進めてた癖に!」
のも「そりゃあアッシーナのことはわざわざ言うまでもないくらい目立ってたからだよ」
埴井「後から調子のいいこと言ったって騙されないわよ!あんた達!さっさと」
のも「ちゃんと証拠もあるよ!」
埴井「証拠……?」
のも「アッシーナが一番目立ってたし、これからもアッシーナが一番目立つって証拠」
埴井「ふ、ふーん?そんなものがあるなら見せてみなさいよ。3分待ってあげるわ」
のも「じゃじゃーん!新参Bチーム戦術ラジオー!」
埴井「覇竜魔牙曇のときの通信機じゃない。そんなのがなんだっていうのよ」
のも「うふふ……これには実は録音機能もあるのでしたー!だ・か・ら」
和理「ちょ」
ダビ「おま」
緑風「?」
ブロ「おいィ!?」
のも「ぽちっとな」

裏声『ひゃーん』

のも「……ぁやぁだ///」
埴井「なっ……」
のも「ほら!コイツをユメにでも頼んでお昼の放送で流せば全校生徒の半分……いや、4分の3は一発でアッシーナのファンになるね!」
埴井「……」
のも「あれ?アッシーナ?」
埴井「……」
のも「もしもーし?」
埴井「……」
のも「返事が無い、ただの屍のようだ?」
埴井「……」

――よくよく考えてみたら阿野次ちゃんにまかせた時点でこの結末は分かりきってましたね……
――誰だよ、阿野次にまかせたやつ……
――俺の寿命がストレスでマッハなんだが……
――お寿司とっても美味しいです♪
――喜んでくれるのは嬉しいけど梨咲さん、お願いだから状況に気付いて……
――未だに状況がよく掴めてねーけど、一個だけわかったことがある……

――これ、ハッピーエンドでも全滅エンドでもねーわ……
――この物語のオチは……





こうして新参陣営総本部は爆発した。

fin