棺桶と青春

古参陣営から送られた31の棺桶は、新参陣営に大きな衝撃を持って迎えられた。
目の前に連なり、まるでこちらを威嚇するかのような威容を誇る棺桶の山。
それらを見て、冷静でいられる新参などいようはずもなかった。
あるものは恐れ、
あるものは慄き、
またあるものは不適に笑い闘争心を燃やす。

あるものはこの小道具でどうやって笑いをとるかに頭を悩ませ、
あるものはかつて自分もこの中に入ったことがあったと過去を偲び、
あるものは寝心地はどうなのかと棺桶の中に入り、
あるものは棺桶を背に食事を始めることで自身の覚悟を周囲に見せつけ、
あるものは怒りが有頂天になり、
あるものはギターを手に歌を歌い、
あるものは教室の隅で本を読み、
あるものは反復横跳びをした。

恐怖は誰の心にも忍び寄る。
古参の圧倒的脅威を具象化したかのごとき眼前の棺達は心弱き新参達を一飲みにした。
焦燥・恐怖・動揺……負の感情は皆に伝播し、新参陣営総本部の中は混乱の坩堝と化した。
最早新参陣営に古参へと戦いを挑むだけの気概を持ったものなど残ってはいない。

――否。

おお!あれを見よ!
純白のユニフォームを身にまとい、キャップの下に決意の光を煌かせ、手に持った白球を高々と掲げるあの男を!
五郎丸卒塔婆!彼の目には一片の曇りもない!彼の所作には一片の怯えもない!彼の声には一片の迷いもない!
曇りなき、怯えなき、迷いなき言葉が新参陣営総本部の闇を切り裂いた!

「そんなことより野球しようぜ!」

新参達の目は晴れた。
今やここには何かを恐れるものも慄くものも怯えるものも迷うものもいない。
五郎丸を中心にスクラムを組んだ新参達の心は一丸である。
彼らはグラウンドへと走り出す。
この素晴らしく青き日々を一時も無駄にはするまいと。
飛び散る汗よ!青春の輝きよ!
願わくは、この一時が彼の者達の未来を照らす、消して潰えぬ灯台とならんことを!










ギィー

「ふう、この寝心地もこれはこれで……って、あれ?みなさん?どこいっちゃったんですかーー!?」